プロサッカー選手の年俸がたったの3,500元(55,000円)?
何をバカなことを、と思ったことでしょう。
残念ながら、実際に中国であった出来事なのです。
昨年、中国リーグのC2(中国足球协会乙级联赛、日本のJ3に相当)の1人の若きプレイヤーが、クラブの財政難の被害者となりました。
名前は1999年生まれの王海乐(Wang HaiLe、王海楽)。
当時はC2の福建天信クラブに所属していました。
しかし、クラブは破産によって消滅。
支払われたのは3,500元のみだったということです。
18歳で北京国安のリザーブチームに加入した王の選手生活は決して楽ではありませんでした。
優秀な選手が集まる国安では、レギュラー争いや過酷な競争に敗れてしまいます。
その後はスペインへ渡るも、トライアルは不合格となり、成すすべなく帰国の途に立ちました。
そんな中、一つのオファーが届きます。
既に中国スーパーリーグ(CSL)の移籍シーズンは閉じていましたが、C2の福建天信が王に興味を示したのです。
契約条件は、まず半年間はC2よりさらに下のリーグ(CMCL)で結果を出すことで、給与は毎月5,000元。
次の移籍シーズンで正式にプロ契約を結び、C2でプレイするというストーリーでした。
良好なコンディションを保ち、昨年の7月に晴れて福建天信に加入が認められました。
月俸は12,000元まで上がり、さぁ、再起を賭けようとしますが……。
福建天信は破綻し、王はC2に試合に出ることはありませんでした。
結局、出場はCMCLでの4試合に留まり、わずか3,500元がその年の報酬となったのです。
困難に直面し、苦い一年を過ごした弱冠20歳の王に、こんな質問を問いかけました。
「この選択に後悔はしているか?」
すると王は、
「いいえ、今でも私は同じ選択をするでしょう。サッカーが好きだから、他のことは考えていません」
と冷静に答えました。
王海楽のような経験は、今日の中国サッカー界にとって珍しいことではないかもしれません。
特にC2以下のレベルが低いリーグでは、給与の未払いは日常茶飯事なのです。
一般的に、プロサッカー選手は報酬が高いイメージがあります。
権威あるデータ調査機関「Sporting Intelligence」が発表した報告によると、2019年のCSLの平均年収は120.7万ドル(1億3,400万円)で、スポーツ連盟のランキング11位。
これはヨーロッパ5大リーグに匹敵する金額だといいます。
年俸総額のトップは上海上港。
一人平均229万ドル(2億5,400万円)を超えました。
これは一般的な年収の160倍に相当します。
ちょっと貰いすぎではないですかね。
でも、これが中国サッカーの現状なのです。
パレートの法則が如く、不合理なピラミッド構造の下、王のように3,500元しか受け取れないプレイヤーがいる一方で、巨額マネーを得るオスカルがボールを蹴っています。
肥えるものは更に肥え、飢えるものは更に飢える
もちろん、ほとんどの選手が給与に悩んでいるわけではないですが、中国サッカーの発展が給与水準の底上げにも遥かに及ばないと認めざるを得ません。
中国のサッカーレベルを高めるために、我々は何をしなければいけないのでしょうか。
プロサッカーリーグ・CSLが2003年に設立され、17年が経とうとしています。
魅力的な報酬を準備したクラブに多くの優秀な外国人が加入したことは、一つの成功と言えます。
しかし、果たして中国サッカー界の底上げができているのかどうか。
これが一番見落としやすい点です。
たしかに、2013年のAFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)を制した広州恒大によって、トップクラスのレベルであることは証明されたかもしれません。
我々は日本、韓国、オーストラリアなどの強豪クラブを打ち破ったのですから。
一体、それは正しい見方なのか、何の「代償」によって得られたのか。
中国の一部のクラブは巨額マネーを投じて、オスカル、パウリーニョ、フッキなどを招聘。
外国人頼みのチームを作り上げました。
結局、彼らの活躍があってこその結果であり、中国サッカーの本来の姿を映し出してはいません。
ACLにおいては広州恒大以外の中国クラブは、良い成績をを収めていないのですから。
そこであなたは疑問に思うはず。
世界のビッグクラブもマネーゲームに講じています。
なぜCSLはダメなのでしょうか。
実際は、CSLが悪いのではありません。
中国サッカー界そのものに、その資格がないのです。
サッカー市場にマネーが流れ込んでいる現状から後戻りすることはできませんが、決して健全とは言えないと思います。
本来であれば、下部リーグから育成・テコ入れを行い、トップチーム及びリーグの強化に繋げるべきなのです。
その下部リーグも安定せず、崩壊しつつあり、補強競争を止めることが出来ない状況です。
もちろん、中国サッカーも問題を把握していないわけではありません。
今後契約が発生する際には報酬に上限が設けられます。
このルールはまだ十分に整っていませんが、資本を下流に向ける働きにはなるでしょう。
とはいえ、親会社がもたらしたサッカーバブルによって、多くの弱小クラブが消えてなくなりました。
今年初めが期日であった給与に関する報告に対しても、C1(中甲、日本のJ2に相当)とC2併せて17のクラブが提出できていません。
最も歴史があった老舗クラブ・遼寧サッカークラブも既に解散しています。
長い冬を迎えた中国サッカーにて着手すべきは、各クラブの補強制限ではなく、既存クラブの救済です。
残念ながら、国民はそれほどサッカーに興味があるわけではありません。
だからこそ、王海楽の、
「サッカーが好きだから、他のことは考えていません」
という言葉は非常に貴重なのです。
※本記事は下記サイトを元に構成・翻訳しています。
■参考サイト(中国語)
20岁小球员一年工资3500,这也许才是中国足球的现状…