中国の全世代が利用しているスマートフォン向けのショートムービーアプリと言えば、「抖音」(Duoyin)。
グローバル版の名前は世間を騒がせている「TikTok」(ティックトック)、知らない人はいないでしょう。
しかしながら、若い女性層の間では「抖音」(中国版TikTok)よりも、「小红书」(小紅書、RED)の方が支持されています。
「小紅書」って、余り聞きなれない名前ですね。
本記事では「小紅書」の機能や特徴に加え、中国の女性に圧倒的な人気を得ている理由をメモっていきます。
1. 中国版インスタの小紅書とは?
2013年6月に上海で誕生した情報を共有するアプリ。
日常のちょっとした風景や出来事を投稿するツールとして広がりました。
スマホで撮影した写真や動画を編集・シェアできるSNS「Instagram」(インスタグラム)と同じですね。
小紅書のシェア画面
生活の一部を身近な人と分かち合う。
まずは特定の繋がりがある人々の間で使われ始めます。
その翌年、BtoC(企業と消費者間の取引)の機能を新たに追加。
ユーザーがアプリ上で店舗を開設して、商品の紹介や販売を可能にするサービスを開始しました。
それまで存在しなかった、
の市場を創造したのです。
これにより個人単位で気軽にブランドの立ち上げることができるようになり、利用者数が急激に増加。
今では1日のユーザー数が1億人に達する勢いで、既存の企業に負けないほどの販売網を開拓できるプラットフォームにまで成長しました。
小紅書のオンラインショップ
2. 主な機能
現在、「小紅書」は中国国内しか利用できません。
グローバルアプリでは無いので触れる機会は無さそうですが、ここでは簡単に「小紅書」の機能を紹介します。
①写真・ショートムービー&ブログ
いまどき特記する必要はないでしょう。
無数にあるSNSアプリで利用できる機能です。
ただし、差別化な部分と言うと、
・ジャンル別に整理されている
例えば、旅先の写真+詳細な文章でブログ替わりに活用されています。
小紅書のブログ機能
日本と異なり、個人で運営しているサイトは皆無(あっても百度で見つけることは不可能)。
そのため、中国では「小紅書」などのプラットフォームで記事を書き、発信するのが一般的です。
旅行、グルメ、美容、健康など生活に特化した「小紅書」。
ここに集められた情報の精度は非常に高く、信頼性に繋がっています。
単なる写真・動画の共有の枠を超えて活用されているのです。
②オンラインショップ
すでに「淘宝」(タオバオ、Taobao)と「京东」(ジンドン、JD)が市場を牛耳っている中、なぜ「小紅書」が勢いを付けているのか。
それの答えは、先ほど触れた「信頼性」です。
「小紅書」に出店している店舗・ユーザーの多くは、①のブログなどで十分な実績を築く必要があります。
正確な情報を発信することで、一定のファン・顧客を確保することが先決ですね。
そして「小紅書」で販売される多くが、
・ファッション/アパレル
・美容/ケア用品
高いクオリティが求められる商品ばかりです。
単価も高いものが少なくなく、消費者・購入者が厳しい目で判断します。
最終的な決め手となるのは、その店舗が信用できるかどうか。
これを確立すれば、個人でも十分にビジネスを成り立ちます。
逆説的ですが、信頼性が担保されているからこそ、その要求度が高い商品が「小紅書」に集まっているのだと言えると思います。
小紅書の商品メニュー
③ライブ配信
こちらも大衆化された機能。
ただし、「小紅書」のライブ配信は、主に商品販売がメインです。
②と連動していますね。
詳しくは以下に記載します。
3. 特徴
他のSNSと大きく違うのは、口コミの影響力が強いところ。
これが「小紅書」の最大の特徴と言って良いでしょう。
口コミとは、一般的には家族や友人など親しい人の間柄で情報が伝わることですね。
「小紅書」も、アプリ上で繋がったユーザー間で有益な情報が飛び交います。
商品に関して言えば、化粧品の実際の効果や反応。
良いモノ・悪いモノの体験談が広まりやすく、それがダイレクトに販売量に響いてきます。
故に店舗側は品質に力を入れることとなり、「小紅書」には自然と良質な商品が集まってくるのです。
そこに登場するのがインフルエンサー。
中国では「KOL」(Key Opinion Leader)または「网红」(網紅、Wanghong)とも呼ばれる人々です。
小紅書でKOLがライブ配信
KOLは20代・30代のアイコン的な存在であり、彼・彼女らの発言はネット上で大きな影響力を持ちます。
「小紅書」の場合、ライブ配信機能と女性のKOLを起用したプロモーションが定着しました。
集客しやすい仕組み作りが整っているのも強みでしょう。
という切り口から、ターゲット及び商品を絞ることで、濃厚なコミュニティも形成されました。
他のSNSとは異なる囲い込みが最大の差別化を生んでいます。
ちなみに、「網紅」という言葉は「小紅書」が由来という説もありますよ。
4. 若い女性に人気の理由
もう答えが出ているかもしれません。
KOLや店舗の信頼性によって、「小紅書」では実物を手に取らなくても、安心して良質な商品を選択できます。
また口コミによって提供者・消費者がWin-Winの関係になりました。
これにマッチしたのが美容系のアイテム。
有名な企業も参入し、第一次流通のプラットフォームの地位を手に入れました。
よって、購入者となる若い女性に支持される理由は、以下に結論付けられます。
②海外の商品も豊富
③誹謗中傷は少なめ
①は自然な流れですね。
ブランドにとって最良なマーケティングの場所です。
「小紅書」が人気を博したきっかけの一つは、旅行や生活のブログ。
特に海外のトレンドに定評があり、流行に敏感な女性がチェックするようになりました。
日本の旅行記事も人気
そこで興味がある商品は、個人店舗を通じて入手できます。
中国国内では流通していない化粧品やケア用品が「小紅書」では見つかります。
②も理解できるでしょう。
最後に、会員制では無いものの、(言葉は悪いですが)民度が高めなユーザーが占めています。
基本的には商品そのものの評価のみがコメントで残されます。
相手を陥れる/傷つける③誹謗中傷は殆どありません。
プラットフォーム内の環境の良さも、利用者を定着させる要因だと思います。
カナダやフランスなど海外商品も多数
他のサイトでも「小紅書」の代名詞として表現される「中国版インスタ」という言葉。
色々考えてみると、厳密には正確ではありません。
(本記事のタイトルでも相乗りしてしまいました……)
機能的にも利用価値的にも、既にインスタとは別次元に移行されています。
中国では圧倒的な存在感で、
口コミSNSアプリ=小紅書(RED)
のポジションを得ました。
他のアプリとかち合うこともなく、独自路線を突き進む「小紅書」に今後も注目です。