サラリーマン、特に若者の間で話題に上がっているのは、職場の「PUA」の問題。
いやはや、全く聞きなれない横文字です。
本記事では、社会で巻き起こっている「PUA」の背景と課題について、メモっていきます。
中国の職場で起こっている「PUA」とは?
PUAとは?
Pick Up Artistの略。
と言われても、ピンと来ないかもしれません。
PUAはアメリカで発祥した単語で、社交技術や自己演技で異性を惹きつける能力を持つ人のこと。
日本語では「ナンパ師」と呼ばれていたりします。
基本的には男女の性交渉を目的としたテクニックの一つとなっています。
しかし、広義・拡大解釈によれば、相手に対する詐欺・脅迫・心理暗示など、洗脳を主とした精神コントロールの意味も含まれています。
ポジティブな面は弱く、むしろ主導権を握るための禁じ手とも解釈できるでしょう。
PUAが中国の国内で広く知れ渡ったきっかけは、北京大学の女子学生が自殺した事件。
とある男性からのPUA行為によって、将来を期待された優秀な学生が自ら命を絶ったのです。
具体的な理由などの詳細は割愛しますが、これを追うように類似の出来事が何件も発生し、社会的な注目を集めました。
そして、最近になって、この問題は会社組織まで広がっています。
職場で起こったPUA=パワハラの事例
従来、PUAは「人」に対して用いられてきましたが、今ではその行為自体を、PUAと指す場合があります。
会社内においては「パワハラ」が最も相応しい言葉でしょう。
PUAの被害者の大半は若者、新卒サラリーマンです。
上司からのキツイ態度や言動は、インターネット上ではPUAと呼ばれ、流行語にもなりました。
中国ではPUA=パワハラと置き換えて良いかと思います。
以下に良くある例を挙げていきます。
PUA事例①:君は何をしてもダメだな、酷すぎる
全否定により精神的ストレスを与える方法ですね。
新社会人にとって一番多く受けるPUAで、約70%の方々が経験した、という結果もあるようです。
もっとも、これは上司が仕事に対する能力を否定し続けることで、部下の自信を削ぎ、思考停止状態にさせることが狙い。
最終的に自分の言いなりにさせてしまうのです。
A氏は上司とのコミュニケーションを取る際、いつも皮肉を言われると悩んでいます。
定例会では罵られ、晒し者になる毎日。
何を指示されても、決して文句を口に出すことはできません。
言葉の暴力によるプレッシャーにも耐えていました。
そんな状況下では何もやる気が起こらず、生きる意味を見失ってしまうでしょう。
と同時に、PUAの受けては人生の信念を打ち砕かれ、「モノ」として扱われることになります。
A氏も精神的な苦痛によって、正常に働くことができなくなりました。
PUAによって、この状態に陥ってしまうケースが最も多いようです。
最終的には自己否定に伴う、うつ病まで発展し兼ねません。
PUA事例②:君はまだ若いのだから、何も考えずにやればいい
事例①と同じく思考を停止させる暗示です。
合わせて、僅かながらの希望を与えることで、部下を巧みにコントロールします。
大学4年生のB氏は、有名な金融企業にてインターン生として実習に参加。
期間中は献身的に与えられた業務を行っていました。
そして数ヶ月の努力が実り、卒業後は正社員として内定を取り付けました。
ただし、会社の都合によって、転籍が2ヶ月ほど遅れるとのこと。
仕方なく、B氏は引き続きインターンという形で在籍しました。
この間、当時の上司は、
「これから大きなプロジェクトがあります。会社はあなたの貢献を期待しています」
と囁き続けます。
が、実際は具体的なアクションは無かったとのこと。
逆に予定の時期が近づいた頃、正社員への転籍が更に来年に持ち越されることに。
これまで数百元しか受け取っていないB氏。
耐えに耐えかねず、会社側に辞職を匂わせます。
すると前出の上司は、
「今の状況を理解してほしい。君は若い。ただガムシャラに働けばいい」
と言いつつ、
「君が面接した会社は把握している。電話一本で不採用にすることができる」
と圧力をかけてきました。
どうやら、B氏は「社畜」としての選択しか残っていないようです……。
というケースは少々特殊ですが、実際に存在した話。
「電話一本で…」のくだりは、強迫に近いですが、これこそPUAを如実に表しています。
小さな希望を与えつつ、外へ出ないよう鎖を繋いでおく。
典型的なブラック企業での常套手段でしょう。
PUA事例③:私の部下で、君も幸せでしょう
こんなことを言う上司って、どうなんでしょうね。
が、熱狂的な崇拝を築くことこそ、PUAのお家芸です。
とあるリーダーの講演を聞いたキャリアウーマンのC氏。
外見が良く、心地よい仕草と言葉遣いに、一瞬で感服させられました。
彼の下で働けたら、どんな良いことだろうか。
多くのことを学べると信じたC氏は、友人の紹介とヘッドハンティングを通じて、このリーダーの会社に入社することに成功します。
そして、念願の上司の下、会社の発展に寄与することを誓いました。
しかし、待っていた現実は悲惨なもの。
出勤初日、C氏をオフィスに呼び出したリーダーは、1時間に渡り洗脳教育を行いました。
築き上げた実績、能力、資産を巧みに組み入れ、C氏が如何に恵まれているかを説きます。
どこかで見覚えのある光景ですね。
まさしくPUAの本質とも言える行為を、リーダーが執ったのです。
これにハマったC氏は、彼の「金言」を部屋一面に貼り付け、発する言葉を全て正しいと信じ込むようになりました。
さて彼女の末路は……リーダーの権威から離れることができず、服従者としての行動のみを取らざるを得なくなったそうです。
これは歴史ではしばしば見られますが、とても恐ろしい手法。
「力」により相手を雁字搦めにするPUA、職場では上級レベルという位置づけでしょう。
PUA事例④:全ては君の責任
「部下の手柄は上司のもの。上司の失敗は部下の責任」
第2シーズンが待ち遠しいドラマ「半沢直樹」にて、大和田常務が発した有名な言葉ですね。
部下を際立たせるときは穏やかな顔で。
使い物にならないと判断したり、危機的状況になると、手のひらを返して部下を犠牲にする。
まさに究極の職場PUAです。
ドラマと同じ体験をしたのはD氏。
会社に1,000万元の損失を与えたとして、上司から責任を取らされました。
元々の原因は部門のトップによるもの。
しかし、上司→部下へ責任の転換が下っていった結果、D氏が貧乏くじを引いてしまったわけです。
さすがにショックを受けたD氏は、精神的に崩壊してしまい、その日の帰り道に自殺を図るまで追い込まれました。
(近くの通行人によって、実行手前で食い留まっています)
組織は往々にして事実を無視して、捻じ曲げ、隠蔽を図ります。
強引に矛先を変えた先が、心が弱い人であれば……人生への影響が計り知れません。
事例①~④は全て中国で現実に起こったストーリー。
日本では結構前から問題となっていた、悪質な「パワハラ」です。
今までは会社・上司の指示や命令に従事していた中国人も、時には異を唱え、自らの立場を守るようになっているのでしょう。
PUAには悪しき習慣の代名詞として、社会に変化をもたらすパワーを持ちつつあります。
2021年の動向を抑えるべきキーワードと言っても過言ではありません。
※本記事は下記サイトを元に構成・翻訳しています。
■参考サイト(中国語)
你是如何被职场PUA慢慢毁掉的