2019年12月、中国国内の「無印良品」の商標権を巡る、日本の良品計画と現地企業間の訴訟に決着がつきました。
判決は本家の敗訴となり、良品計画は中国での一部の商品で「無印良品」を使用することができなくなりました。
では、その後の両社の店舗はどうなっているのか。
訴訟問題を振り返りながら、北京で展開する「無印良品」の状況をメモっていきます。
訴訟問題
良品計画は2005年より中国で「無印良品」を展開しています。
日本ブランドを掲げた品質の良い製品は、中国国民に瞬く間に受け入れられました。
ところが2017年、コンセプトが激似の「无印良品 Natural Mill」が北京に登場します。
運営するのは現地企業の北京綿田紡績品有限公司。
店構えだけでなく、商品のラインナップも同じでした。
(无は「無」の簡体字)
良品計画は直ちに北京綿田を告訴。
商標権の侵害を訴えます。
しかし、一審では良品計画が敗訴してしまいます。
理由は、実は中国では2001年に既に「無印良品」の商標登録がなされており、2004年に商標権を北京綿田が取得していたため。
2005年に良品計画が中国に進出する1年前ですね。
法律上では「無印良品」の商標権を、良品計画が逆に侵害していた形となっていたのです。
納得がいかない良品計画は上告しますが、二審でも判決は変わらず、2019年に敗訴が決まったというわけです。
日本:良品計画「無印良品」→侵害
中国:北京綿田「無印良品 Natural Mill」→勝訴
本家・日本の無印(左)と模倣版・中国の無印(右)
この結果、良品計画は毛布、ベッド/枕カバー、タオル、絨毯などの製品で「無印良品」の使用を禁止されました。
また北京綿田の商標を侵害したとして、賠償金の支払いも命じられています。
中国の商標法では、最も早く出願した人に権利を認める「先願主義」になっているようで、日本のブランド名が現地に渡ってしまった悲しき事例となりました。
本家「無印良品」の現状
訴訟の結果は経営に少なからず影響があったかもですが、消費者は気にしていないでしょう。
ショッピングモールの1等地に構える「無印良品」は平日も繁盛していて、人の流れは途切れません。
日本同様、北京の店舗も明るい照明と、親しみやすいレイアウト構成です。
ゆったりとした空間に心もワクワク。
ここでは簡単なレポートにとどめますが、良質な製品が消費者の心をがっちり掴んでいる様子でした。
「無印良品 Natural Mill」の現状
本家に比べると、「無印良品 Natural Mill」は割と地味な場所でオープンしています。
人通りが多くなく、ひっそり感が漂うロケーションですね。
偵察に行ったときは、休日にも関わらず、店内にお客さんは一人もいません。
とっくに過ぎた春節のデコレーションが、妙に悲しさを倍増させています。
販売されている商品は生活用品が中心ですが、ラインナップはかなり少なめ。
「選ぶ楽しみ」は無いですね。
また商品の配置もごくごく普通で、家に持ち帰った時の想像がしにくい。
全体的に雰囲気が暗めなのも気になりました。
寝室用品のレイアウト
品質は、まぁまぁだと思います。
消耗品として割り切れば、納得できるクオリティでしょう。
タオルなどの綿製品は充実
ちなみに男性の下着は45元(約700円)。
ユニクロほど安くはなく、無印良品ほど価値があるとは言えないかも。
何とも絶妙な気持ちです。
全体的にこじんまりしているため、「軽く見てみましょうか」的なノリになります。
ただ、わざわざ「無印良品 Natural Mill」で買い物しようとは思いませんね。
日本のブランドだと勘違いする人以外は、本家の「無印良品」に行くはず。
両社の店内を見渡せば、一目瞭然でした。
カラフルなダウンジャケットが目立つ
商標権は買えれど、信頼は買えません。
いくら日本の名を飾っても、消費者はより安心・信用できるモノを選びます。
訴訟で敗れても「日本の無印良品」のブランド力は健在。
品質が一流なのは変わりがありませんから。
最終的には本家・良品計画が勝利するのです。
北京綿田も「無印良品 Natural Mill」も、見た目や形、名称だけでなくモノの本質を理解して、商品開発に取り組んでほしいと感じました。