今では無料プレイが当たり前のオンラインゲームやスマートフォンゲーム。
ソフトやアプリをダウンロードして、利用登録するだけで気軽に始められます。
しかし、ゲームを提供する側(ゲーム会社)にとっては、日本独自のルールや法律を理解
ここではオンラインゲーム事業を行う上で、抑えておきたい法律についてメモっていきます。
・オンラインゲーム事業に係る法律が理解できる
・ゲーム事業における注意点が分かる
知っておきたいオンラインゲームの法律や規制
個人情報保護法
ゲーム業界に限らず、お客さまの情報を預かる全てのサービスで守るべき法律。
利用者や消費者が安心できるよう、企業や団体に個人情報を大切に扱ってもらった上で、有効に活用できるよう共通のルールを定めたのが、個人情報保護法です。
個人情報の範囲
この法律に準じて事業を行い、ユーザーの個人情報を管理するのゲーム会社。
では、オンラインゲーム/スマホゲームにおける「個人情報」とは一体、何を指すのでしょうか。
ユーザーがゲームを始める流れとしては、
ゲームをパソコンやスマホにダウンロード → 利用登録 → ゲームプレイ/商品購入
この過程で様々な情報を取得することがあります。
代表的なものを以下に整理します。
①ユーザーから直接取得する情報
- 氏名
- 生年月日
- メールアドレス
などがあります。
例えば、ユーザーがカスタマーサポート(CS)へ問い合わせする場合は、電子メールが用いられます。
ゲーム内で課金をするには年齢確認が必要となり、生年月日を入力することもあるでしょう。
ゲームをプレイするにあたり、ユーザーは最小限の個人情報を提供することになります。
②端末情報
- 機種名
- OSの種類(iOS/Android)
- IPアドレス
- GPSによる位置情報
などアプリを起動させた際に、自動的にゲーム会社に届きます。
これらはサーバー・通信環境などの改善に役立てられます。
③プレイデータ
- ログイン時間
- 行動記録
- 課金状況
などゲームのプレイデータもユーザーの大切な情報と言えます。
④支払情報
スマホゲームにおいては、ゲーム内通貨や商品の購入はApp StoreやGoogle Playを介して決済が行われます。
ユーザーとプラットフォーム間で交わされた請求・支払情報を、必要に応じてゲーム会社が取得しています。
⑤コミュニケーション機能
- Twitter情報
- Facebook情報
- LINE情報
ゲームアカウントとSNSアプリを連動させて、データを保全することがあります。
取り扱いの注意点
上記の個人情報は、
- サービスの向上や改善
- ゲーム内イベントへの活用
- マーケティング調査、統計、分析
- CS業務でのユーザー対応
などに役立てられます。
しかしながら、個人情報はあくまでゲーム会社の内部のみで取り扱うもので、第三者へ提供することはありません。
また対象となる個人情報と、その管理・破棄の判断はゲーム会社に委ねられます。
そのため、ユーザーが初めてプレイする際には、「プライバシーポリシー」という形で個人情報に係る全ての事項を示す必要があります。
これに同意したユーザーのみが、サービスを利用できるといった手順です。
ゲーム会社は個人情報保護に対する重要性を認識し、その取り扱いには細心の注意を払うことが求められます。
特定商取引法
ゲーム会社による違法・悪質な勧誘行為を防止し、ユーザーの利益を守ることを目的とする法律。
特定商取引法は、トラブルが多い訪問販売と通信販売が対象となっています。
固いですね。
オンラインゲーム/スマホゲーム的に言うと、
ゲーム内でのアイテムや商品の販売に関して、クーリング・オフ制度などユーザーを守るルール
といった感じでしょうか。
ゲーム内の課金はインターネット経由で取引が行われます。
インターネット=通信手段という位置づけであり、オンラインゲームでは「通信販売」に該当するので、特定商取引法の適用範囲内となっています。
この法律に基づき、ゲーム会社はゲーム内や公式サイトに、
- アイテム/商品/ゲーム内通貨の販売者名(ゲーム会社名)
- 所在地
- お問い合わせ先
- 代表者名
- 販売価格(主にゲーム内通貨の価値表示)
- 支払方法
- 提供時期
- 返金に関する事項
を表示する義務が生じます。
理由としては、ゲーム会社の情報を開示することで、ユーザーが安心して商品を購入できるようになるため。
詳細不明な会社にお金を払いたいとは思いませんよね。
信頼があって初めて取引は成立するもの。
ゲーム会社が知っておくべき内容だと思います。
なお販売価格は、「ジェム」や「ダイヤ」などゲーム内通貨の取引金額を明記します。
ジェム×1=1円
10ダイヤ=1円
といった具合に。
税込みの有無もきちんと記載しましょう。
これは後述の「資金決済法」にて重要になってきます。
資金決済法
商品券やプリペイドカードなどの金券、暗号資産の決済、銀行業以外による資金移動業について規定する日本の法律。
少し難しい表現ですが、ざっくり噛み砕くと、お金の取り扱いや決済に関して定めた法律です。
資金決済法をオンラインゲーム/スマホゲームに当てはめると、実はかなり重要な法規制となります。
なので、これに関しては別記事で掘り下げる予定で、以下はザックリと整理するに留めます。
オンラインゲームにおける資金決済法の役目
大半のゲームでは「ジェム」や「ダイヤ」といった「ゲーム内通貨」を販売されています。
資金決済法ではこの通貨を「暗号資産」(仮想通貨)と呼んでいます。
「暗号資産」を取り扱っている事業者は原則として財務局へ届出を行わなければならず、ゲーム会社も例外ではありません。
日本で初めてオンラインゲームのサービスを展開する場合は、前もって届出・登録しておきましょう。
またユーザーが「ゲーム内通貨」を購入した後、これらは全てが消費されるわけではなく、一部は「未使用」のままゲーム内に残ります。
「ゲーム内通貨」には使用期限はなく、ユーザーの資産としてゲーム内に保留されている状態ですね。
もし全ユーザーの未消費の「ゲーム内通貨」=「未使用残高」が合計で1,000万円分を超えると、ゲーム会社に「発行保証金の供託義務」が発生します。
やや複雑になってきました。
要は、
といった義務です。
万が一のために、ユーザーに返金するための資金を貯めておくことを指します。
ここがオンラインゲーム/スマホゲームにおける資金決済法のミソとなり、消費者=ユーザーを守る役割を果たしているのです。
ゲーム会社の責務&留意点
発行保証金は、「未使用残高」の合計額の半分以上と定められています。
例えば、ゲーム内で溜まったジェムの数が合計が、
ジェム×1,000万個=1,000万円分なら保証金は500万円
1億円分なら保証金5,000万円
ですね。
結構な金額ですが、指定の供託所(法務局)に預けなければなりません。
また財務局へは毎年3月と9月の2回、定期的な残高報告と保証金を納めた証明書の提出も義務付けられています。
このような制度は世界的に見ても稀のよう。
ただし、財務局への届出&報告は、日本国内にある会社のみに限定されています。
海外に運営・事業拠点があるゲーム会社が、届出なしで日本で「ゲーム内通貨」=「暗号資産」を販売することはできません。
届出をせずに「ゲーム内通貨」を販売することは法律に接触します。
なので、海外のゲーム会社が日本でリリース・サービスを行う場合、日本支社をきちんと設立して、支社名義で財務局へ届出&定期報告を行わなければならないのです。
日本に進出を考えている国外企業は特に留意しておくべき法律と言えるでしょう。
なお財務局への届出・登録が完了すると、下記のサイトなどで事業者名が開示されます。
■前払式支払手段(第三者型)発行者登録一覧
https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/daisan.pdf
併せて、ゲーム会社はゲーム内や公式サイトにて同様の情報を記載する必要もあります。
抑えておきたいポイントでしょう。
景品表示法
正式には、不当景品類及び不当表示防止法と言います。
商品をサービスを販売する際に、価格と景品の数を規制するための法律です。
これがオンラインゲーム/スマホゲームと、どう関係してくるのでしょうか。
景品表示法による風当たりが強くなったのは、「ガチャ」(ランダム性くじ引き)が登場してから。
特に問題となったのは、
- 課金を通じてのみ利用できる「有料ガチャ」
- 「有料ガチャ」から入手できる特定のアイテム
- 特定のアイテムを複数集めると得られる、新たなアイテム及び効果
といった、いわゆる「コンプリートガチャ」(コンプガチャ)の仕組みが登場したときでした。
ガチャ自体は景品表示法には接触しないものの、「複数集めると得られる、新たなアイテム及び効果」が「景品」に当たるとされ、議論が過熱したのです。
またこの行為はユーザーの射幸性を煽り、多大なお金を使わせることにも繋がるため、生活・社会に悪影響を及ぼしかねないと判断されました。
この結果、「コンプガチャ」は不当景品類であると見なされ、ゲーム会社は本システムを導入することを控えることとなったのです。
またガチャから出現するレアなアイテムの確率表記や、期間限定セールでの二重価格(正規価格と販売価格)の表示など、オンラインゲーム/スマホゲームでは景品表示法に係る問題は少なくありません。
ゲーム内のイベントやショップが不適当な表現や誤認を与える表示になっていないか。
景品表示表はゲーム会社が最も理解しておくべき法律と言えます。
こちらは後日、別記事でまとめようと思っています。
コンプガチャ
大手ゲーム会社なら法務部のプロフェッショナルが対応してくれるので、現場の人間は彼らにお任せでも良いかもしれません。
しかし、小規模なゲーム会社や個人でゲーム開発&リリースする場合は、本記事の法律への理解が必要だと思います。
またボクが所属していた中国のゲーム会社も、法規制への知識不足で、日本市場に進出する際にかなり苦労しました。
未然にトラブルを防ぐためにも、前もって十分な準備を整えておきましょう。