スマートフォンが子供や小学生にも普及し始めた数年前から、ゲーム市場が更に拡大しています。
その一方で、オンラインゲーム/スマートフォンゲームへの風当たりが強くなっています。
「子どものゲーム利用時間を定めた条例」なんていうのも出始めました。
そんな感じなので、消費者(ユーザー)を守るための法律も増えています。
その中でスマホゲームを運営している事業者(ゲーム会社)が最も理解しなければいけないのが「景品表示法」。
これを抑えておかないと、とんでもないトラブルに見舞われる可能性があります。
ここでは景品表示法のイロハをメモっていきます。
とその前に、先にポイント&結論の整理です。
→ゲーム内で誤解を招く表示や説明に気をつける
・景品(おまけ)の提供制限
→ガチャから出現するレアアイテムは上限50,000円で入手可能にする
これを頭の片隅に置いてから、以下を読破してもらえればと思います。
・ゲーム会社が知っておくべき景品表示法が理解できる
・スマホゲーム事業における注意点が分かる
景品表示法とは?
正式には、
不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)
といいます。
かなり歴史のある法なんですね……。
どんな内容かというと、
の法律となります。
■消費者庁の公式サイト
景品表示法とは
少しややこしいですね。
ゲーム的に、もう少し要点を整理してみましょう。
②過大な景品(おまけ)を防止するため、最高額を設ける
③上記2点により、ユーザーの合理的な選択を確保する
だとイメージが湧きやすいかもしれません。
これを遵守するための法律が「景品表示法」となります。
景品表示法における禁止事項
ユーザーが安心して商品を購入し、かつ安心してプレイできるよう、ゲーム会社が行ってはいけない禁止事項が大きく分けて2つあります。
②景品類の制限及び禁止
前記した①と②にあたる部分ですね。
以下でさらに詳しく説明してみます。
①不当表示の禁止
ところで、不当な表示とはどんなものを指すのでしょうか。
消費者庁では、
・有利誤認表示
・誤認される恐れがある表示
がそれに該当するとしています。
ゲーム内で発生しうる例を挙げながら、ひとつずつ見ていきましょう。
優良誤認表示の禁止
実際のものより著しく優良であると示すことは禁止です。
「最強のキャラが登場!」と表示
→ 実際は大して強くない
「レアカードの出現率が10%!」と表示
→ 実感では5%ほどで、客観的な根拠がない
有利誤認表示の禁止
実際のものより著しく有利であると示すことも禁止です。
「特別プライスで販売!」と表示
→ 元の価格が表示されておらず、比較できない
「期間限定でスペシャルパックを販売!」と謳う
→ 全く同じ内容で、何度も販売される
誤認される恐れがある表示の禁止
その他、消費者に誤解を与えるような表示もいけません。
「ステータスが大幅にアップ」と表示
→ 実際は攻撃力のみアップする
など曖昧な表現は避け、不十分な表示や説明にならないよう気をつけましょう。
②景品類の制限及び禁止
もう一つの大きな禁止事項が「景品」(おまけ)に関するもの。
景品は、
・共同懸賞による景品類
・総付景品
に分類されていて、それぞれに定義と制限があります。
なお「懸賞」とは、
商品やサービスの利用者に対し、くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供すること
であり、「景品」とは、
おまけ、粗品、賞品など
を指します。
一般懸賞による景品類の提供制限
ユーザー1人ひとりに対して提供・行われる懸賞を「一般懸賞」と呼んでいます。
抽選、じゃんけん、クイズ、パズル、ガチャ(ランダム性のくじ引き)
ゲーム内では、
ガチャ = 一般懸賞
キャラクター/カード/アイテム = 景品
の位置づけですね。
有料・無料で用意されているゲームもありますが、ガチャはゲーム会社にとって大きな収益となるコンテンツであります。
一般懸賞における景品類の限度額は以下の通り。
懸賞による取引価額 | 最高額 | 総額 |
5,000円未満 | 取引価額の20倍 | 懸賞に係る売上 予定総額の2% |
5,000円以上 | 10万円 |
なお、オンラインゲーム/スマホゲームの場合だと制限金額は異なっており、それは後述します。
共同懸賞による景品類の提供制限
複数の人や事業者が関わる懸賞が「共同懸賞」です。
商店街やショッピングモールなどの中元・歳末セール
直接的にはスマホゲームとはあまり関係がありません。
なので、さらりと触れるだけに留めます。
一応、共同懸賞における景品るの限度額だけ。
最高額:取引価額にかかわらず30万円
総額:懸賞に係る売上予定総額の3%
総付景品の提供制限
商品を購入した利用者や、来店者にもれなく提供する金品等を「総付景品」といいます。
お菓子に付いてくる玩具
雑誌に付いている小物
先着100名に無料券
商品やサービスの申し込み順または先着順により提供される金品等も含まれます。
こちらもスマホゲームなどでは稀なケースかもしれません。
総付景品の限度額は↓
取引価額 | 最高額 |
1,000円未満 | 200円 |
1,000円以上 | 取引価額の10分の2 |
ゲーム運営で景品表示法に接触しそうな点
お待たせいたしました。
いよいよ核心の部分です。
ゲーム会社がしっかりと抑えておきたいのが、以下の4点。
②ガチャの確率表記
③ガチャにおける推定金額
④コンプリートガチャ
業界の方なら当たり前のポイントですが、掘り下げて解説していきます。
①「基本無料」の有利誤認性
世に出回っている殆どのスマホゲームは、App StoreやGoogle Playからアプリをダウンロード/インストールするのに料金が発生しません。
お金を払わずにお試しでプレイできるのはユーザーにとって良いこと。
ゲーム会社にとってもユーザー獲得の難易度が下がり、Win-Winの関係ですね。
ただし、ゲームをプレイし続けるにあたりキャラクター、カード、アイテムの購入などで課金が必要になる場合があります。
このように基本的に無料コンテンツと有料サービスを組み合わせることをフリーミアムモデルといいます。
この手法はほぼ世間に知れ渡っているため、ユーザーに改めて認知させる必要はないかもしれません。
しかし、「基本無料」の言葉だけが独り歩きすると、「有利誤認表示」に触れる恐れがあります。
よって、きちんと、
「基本無料、一部アプリ内アイテム課金あり」
と表示することをオススメします。
②ガチャの確率表記
有料・無料に関わらず、ガチャから出現する全てのアイテムの確率は表記が必須になっています。
もちろん、誤解のない正確な確率ですね。
また確率アップイベントなどを実施する際には、確率における誇大表記にならないよう注意しましょう。
イベント実施前(元の確率)と実施後(アップ時の確率)で比較できる形が好ましいと思います。
③ガチャにおける推定金額
少し言葉の説明を。
推定金額 = 数学的に言うと期待値
です。
ガチャにおける統計上・確率論上で、特定のアイテムが出現するのに必要な金額の理論値とも言えますね。
ガチャ1回:100円
欲しいアイテムの出現確率:5%
なら、計算方法は、
推定金額=100÷5%=2,000円
となります。
この金額の上限を定めることは「景品表示法」に沿った対応なのです。
一般的には、強力なキャラクターやレアなアイテムは課金が必須の「有料ガチャ」にて提供される場合が多いです。
またその出現確率は、その他の普通のアイテムと比べて、かなり低く設定されています。
先ほど、ガチャは「一般懸賞」にあたると述べました。
一般懸賞の最高額(≒推定金額)は10万円でしたね。
ところが、スマホゲームのユーザー(特に学生以下)にとっては結構な金額。
そこで有名・大手のゲーム会社で話し合いが行われ、オンラインゲーム/スマホゲームにおいては、
推定金額は5万円を上限とする
と取り決め(=ガイドライン)がなされたのです。
2012年頃の話ですね。
これに至った経緯は割愛しますが、
「有料ガチャ」から「レアアイテム」を1つ獲得するには5万円あれば十分
というわけです。
なので、2013年以降にリリースされたゲームのガチャは、↑を考慮した設計になっています。
・レアアイテムを入手するまでの推定金額の上限は50,000円
この2つはセットで覚えておきましょう。
④コンプリートガチャ
ゲーム業界では「コンプガチャ」とも呼ばれています。
どんなガチャ・仕組かというと、ゲーム内の有料ガチャにて、特定の2つ以上の異なる種類のキャラクターやカード、アイテム等を入手したユーザーに対し、
・キャラクターのステータスがアップする
・特別なアイテムが付与される
などの効果や経済上の利益を提供する手法。
「カード合わせ」のことだと理解してもらえれば良いです。
何が問題か。
それは「コンプガチャ」によって提供される効果や経済上の利益が、「景品表示法」の「景品」(おまけ)に該当する場合があるから。
プラス、これを求めてユーザー自身がコントロールができなり、多額のお金を投じてしまいかねない。
射幸心を煽る
性質があるからです。
特に「射幸心を煽る」手法が社会問題となり、先のガイドラインによって、「コンプガチャ」は原則禁止となりました。
というか、この問題がスマホゲームと「景品表示法」の関係を深めたと言っても過言ではありません。
ゲームを開発する段階で、ゲーム会社が留意すべき点でしょう。
なお、どのような場合が「コンプガチャ」の事例となるかは、別記事で解説します。
お疲れさまでした。
そして、最後まで閲読いただき、ありがとうございます。
「景品表示法」はガチャを主体とするスマホゲームのビジネスモデルと大きく関わっています。
ゲーム会社が収益の大半をガチャに依存している以上、この法律への理解が不可欠。
本記事が皆さまの参考となれば幸いです。