10年前に携帯電話で遊べるソーシャルゲームが登場し、大ブームとなりました。
一方で、これにまつわる法規制にも焦点が集まりました。
生活の主流がスマートフォンに移って以降も、ゲームを運営している事業者(ゲーム会社)にとっては、法律との照らし合わせが不可欠となっています。
現代のゲーム業界において、「最も稼げるシステム」は「ガチャ」です。
ここではガチャの仕組みを利用したことで、社会的に論争を巻き起こした「コンプリートガチャ」について、詳しくメモっていきます。
とその前に、先にポイント&結論の整理です。
- コンプリートガチャ=カード合わせ
- 「カード合わせ」は景品表示法に接触する
- コンプリートガチャも法律違反になる
- ガチャ依存を脱却しよう
これを頭の片隅に置いてから、以下を読破してもらえればと思います。
・コンプリートガチャの概要と問題点が理解できる
・コンプリートガチャに該当する具体例が分かる
・コンプリートガチャ対策の参考になる
1. 専門用語の定義
3つの用語だけ、おさらいします。
すでに把握済みの方は、スキップして構いません。
アイテム課金
ゲーム内で使用できる通貨(=ゲーム内通貨)やアイテムをユーザーに有料で販売するビジネスモデル。
ガチャ
ゲーム内のアイテムがランダムで入手できるシステム。
くじ引きのようなもの。
有料ガチャ
金銭、もしくは金銭のみで購入できる仮想通貨(ゲーム内通貨)を消費してでのみ利用できるガチャ。
2. コンプリートガチャ(コンプガチャ)とは?
コンプリートガチャ=Complete Gacha
英語からその呼び名が付けられました。
では、コンプリートガチャ(コンプガチャ)はどのようなシステムなのでしょうか。
業界団体(一般社団法人ソーシャルゲーム協会など)のガイドラインでは、
「有料ガチャアイテムを含む特定の2つ以上の異なるアイテム等を全部揃えることを条件として、ソーシャルゲーム等で使用することができる景品類たる別のアイテム等を利用者に提供する方式」
と定めています。
ゲーム風に置き換えてみると、
ゲーム内の有料ガチャにて、特定の2つ以上の異なる種類のキャラクター、カード、アイテム等を入手したユーザーに対し、
- 特別なアイテムが付与される
- キャラクターのステータスがアップする
などの効果や経済上の利益を提供する手法
となります。
要は、
- 有料ガチャから入手できるアイテム等を2つ以上集める
- 該当のアイテムを全て揃える(コンプリートする)と、レアアイテムなどが入手できる
仕組みですね。
3. コンプガチャの問題点
問題点は大きく分けて2つ。
②過剰な課金システム(社会上の問題)
です。
一つずつ掘り下げて解説していきます。
①カード合わせ(法律上の問題)
「カード合わせ」とは、2つ以上の種類の文字、絵、符号などを合わせることですね。
トランプの神経衰弱が分かりやすいかもしれません。
この「カード合わせ」は、景品表示法に接触します。
景品表示法については↓
何がダメかというと、景品表示法では「景品類の最高額」が制限されていて、
はしてはならないと定められているから。
レアアイテムを入手するためには複数のアイテムが必要で、それらを入手するためにはかなりの資金が必要ですよね。
この投入する資金額の合計が、景品表示法で設定されている「景品類の最高額」を超える恐れがあり、この部分が引っ掛かってしますのです。
スマホゲーム(ソーシャルゲーム)が流行し始め、コンプガチャのシステムが登場した2011~2012年頃に問題提起されました。
そして日本の消費者庁は、
コンプガチャは景品表示法違反である
とし、ゲーム会社に注意を喚起したのです。
②過剰な課金システム(社会上の問題)
古くは「ビックリマンチョコ」から。
低確率で手に入るオマケのキラキラシールを求めて、子供たちが大ハマりし、お小遣いを全て投入。
加えて、食べ物(チョコレート)が捨てられるという問題が起こりました。
30代以降のミドル層は聞いたことがあるかと思います。
これと同じようなことがスマホゲームの有料ガチャでも見られるのです。
アイテムをコンプリートするためには、多額のお金が投じられます。
ギャンブル性が強く、射幸性・過剰課金を煽るシステムが問題視されました。
特に未成年を含む若者のユーザーが、自制できなくなってしまったのです。
時代は繰り返されるのでしょうか。
もしくは「ビックリマン」世代が大人になっても、子供心は変わらず、といったところか。
いずれにせよ、①法律上と②社会上の問題が重なり、コンプガチャのシステムを大幅に制限せざるを得なくなったのです。
4. コンプガチャに該当する具体的なダメな例
前述の通り、コンプガチャの大きな問題は「カード合わせ」ですが、その組み合わせ方法やレアアイテムの提供方法は様々。
以下では、景品表示法に違反する「カード合わせ」のダメな例を紹介します。
①典型的なコンプガチャの手法
アイテム課金による有料ガチャを通じて、2つ以上の異なるアイテム等を揃えると、別のアイテム等が入手できる場合。
この特定の組み合わせが事前に明示されていると、全て集めたいという気持ちが強まりますよね。
最もメジャーな方法で、ダメなパターンです。
②典型的なコンプガチャ+イベント参加
①を派生させた手法ですね。
特定の組み合わせが完成し、イベントに参加もしくは条件をクリアすると、別のアイテム等が入手できる場合。
1回イベントを間に挟んでいますが、完全にアウトとなります。
③ビンゴ形式の手法
有料ガチャを通じて入手できる2つ以上の異なるアイテム等が、ビンゴのように一定のパターンや条件を満たすと、別のアイテム等が入手できる場合。
①を複雑に、且つ組み合わせパターンを広げた感じでしょうか。
こちらもコンプガチャに該当します。
④ステータスやパラメータにメリットを与える手法
コンプガチャによって手に入るものが別のアイテム等ではなく、能力値などが有利になる場合。
「モノ」としての提供だけでなく、「データ」による付与も禁止されています。
⑤合成等による手法
有料ガチャを通じて入手した2つ以上の特定のアイテム等を合成すると、別のアイテム等が入手できる場合。
※合成:揃えたアイテム等の全部または一部が消滅するシステム
合成を用いたケースも基本的には禁止されます。
ただし、不特定のアイテムを対象として合成が可能な場合は、特定の組合せを揃える必要がないため、原則として該当しません。
それでも、有料ガチャから入手できるアイテム等を3つ以上で揃える、といった条件や仕様はブラックに近くなります。
いずれにしても、アイテム課金/有料で入手したアイテムが合成によって無くなってしまうのは悲しいですね。
この手法で別アイテムを提供するのは好ましくありませんので、気を付けましょう。
5. コンプガチャに該当しないが、注意すべき具体例
以上の5点は景品表示法に触れ、コンプガチャと見なされてしまいます。
では、逆にどんな場合はコンプガチャにならないのでしょうか。
こちらも例を挙げながら説明します。
基本的にはコンプガチャには該当しませんが、ユーザーの自主的かつ合理的な選択を確保する観点から、推奨しない又は禁止されている例となりますので、留意が必要です。
①特定の同一アイテム等を集める手法
アイテム課金による有料ガチャを通じて、2つ以上の同一アイテム等を揃えると、別のアイテム等が入手できる場合。
組み合わせが事前に明示されていても、集める対象が1種類だけなら、コンプガチャに該当しないとされています。
ただし、集めるべき個数によっては問題になるかもなので、気をつけましょう。
②特定の同一アイテム等を集める+イベント参加
①を派生させた手法。
特定の組み合わせが完成し、イベントに参加もしくは条件をクリアすると、別のアイテム等が入手できる場合。
これもコンプガチャとはなりませんが、非推奨です。
③同一アイテムの合成等による手法
有料ガチャを通じて入手した2つ以上の同一アイテム等を合成すると、別のアイテム等が入手できる場合。
集めるアイテムが同一の場合は、コンプガチャに該当しないことがあります。
それでも一般的には自主規制対象の組み合わせです。
④点数を付与する手法
有料ガチャによって入手できるアイテム等に点数が設けられていて、一定の点数に達すると、別のアイテム等が入手できる場合。
コンプガチャにはあたりません。
しかし、ユーザーが適正にプレイができるよう、ゲーム会社はシステム・設計に十分に配慮しつつ、各アイテムの点数差が大きくならないようにするなど、適切な基準や範囲を定める必要があります。
■参考サイト
コンプリートガチャガイドライン
6. コンプガチャに対する対策方法
以上を元に、景品表示法や「カード合わせ」およびコンプガチャに接触しないような方法を考えていきたいと思います。
……が。
結論を言うと、
に尽きます。
そして、
かなと。
ゲーム会社にとってガチャの存在は依然として大きく、売上を高める最も良い手段として考えられています。
ランダム性の出現率によって、推定金額以上を投じないと入手できない場合があり、結果的に売上を押し上げてくれるからです。
まさに「ビックリマンチョコ」と同じですね。
しかし、この手法は決してユーザーには優しくありません。
故に、彼らが安心してオンラインゲーム/スマホゲームを楽しめる環境を提供・整備のために、まずはコンプガチャが規制対象となったわけです。
最近のスマホゲームでは一定価格による「買い切りアイテム」にシフトしているケースも見られます。
良い商品、強力なアイテムは売り方次第。
ガチャから脱却することこそが、手っ取り早い対策になると思います。
お疲れさまでした。
そして、最後まで閲読いただき、ありがとうございます。
本記事で紹介したコンプガチャの例は、全てを網羅しているわけではありません。
また該当・非該当を規定するものでもないです。
他にも考えられるパターンがいくつもあるので、一例として取り扱ってもらえればと思います。
時代の流れによって、ターゲットとなる対象物は変わってきます。
コンプガチャ問題はソーシャルゲーム/スマホゲームが大ブームとなったことで注目が集まったわけですが、ゲームの新たなジャンル・システムやビジネスモデルが登場した際には、同様の論争が巻き起こる可能性があります。
なので、ゲーム業界も常にアンテナを張っておく必要があるのです。