最近、インターネット上で話題となった、ある言葉。
早安打工人
従来の意味で直訳すると、
おはよう、パートタイマーさん
でしょうか。
でも、しっくりこないですよね。
現代では少しニュアンスが変わっているのです。
「打工人=社畜」から中国の労働状況が分かる
「打工人」の意味
当初、SNSの「微博」(ウェイボー、Weibo)で流行っている「打工人」は、
で使われました。
ただ、何かボンヤリ&抽象的で、ピンと来ませんよね。
中国語を学習したことがある方なら、「打工」という単語は聞いたことがあるでしょう。
学生さんや、正規の職に就いていない人が、小銭稼ぎするときの単語。
主に時間給で換算される仕事が、「打工」にあたります。
今回は、これに「人」が付いただけ。
なのに、どういうわけか、瞬く間にインターネットで広まったのです。
どうしてでしょうか。
なぜ「打工人」が流行ったのか
「打工人」を使う人、あるいは受け取る人のイメージとして、「雇われ人」を連想させたのがきっかけです。
具体的には、
- 工人(肉体労働者)
- 農民工(農村から出稼ぎにきている労働者)
- 上班族(サラリーマン)
- 白領(ホワイトカラー、オフィスで働く人)
- 藍領(ブルーカラー、生産現場で働く人)
と雇われている全ての人を指します。
理由は、ちょっぴり皮肉が込められているのですが……まるでアルバイトのような(もしくはそれ以下の)働き方をさせられているからですね。
どんな職業であろうと、生活のために働かなければなりません。
給料が低く、残業が多いにも関わらず、今の仕事を辞められない。
こんな人々を「打工人」と呼ぶようになりました。
- 社員・雇われ人として、勤め先に飼いならされた人々
- プライベートを犠牲に、会社のために働く人々
- 無給・サービス残業で苦しむ人々
まさに日本語の「社畜」と同じ。
そんな過酷な労働状況が背景にあって、SNSで流行った形です。
2019年の流行語「996」と「007」
昨年、「阿里巴巴」(アリババ、Alibaba)の創業者・马云(ジャック・マー)が提唱して、物議を醸しだしたのが「996」。
「若いうちは、とにかくガムシャラに仕事に打ち込み、自分を成長させるべき」といったメッセージが込められているのですが……若者から総反発を食らいます。
身を粉にして働くのは、もう古い考え方なのでしょう。
日本でも働き方について議論がされていますが、中国でも同様のケースが見られ始めました。
特にIT企業では、高待遇と引き換えに、過度な労働を強いることは珍しくありません。
アリババと共に「BATH」を形成する「百度」(バイドゥ、Baidu)、「腾讯」(テンセント、Tencent)、「华为」(ファーウェイ、Huawei)も、優秀な社員が猛烈に働いた結果、世界に羽ばたくカンパニーへと成長したのですから。
また中には、「007」に相当する企業もあるそう。
ブラック企業もビックリですよね。
まぁ、単なる語呂合わせによる揶揄なのでしょうが。
ともあれ、労働基準法などあって無いような中国。
経済的な発展の裏には、多くの犠牲が伴っているのが事実のようです。
ただし、それも大部分の一般市民や若者には通用しません。
彼らが求めているのは、安定した雇用と正常な労働環境。
「996」や「007」は言わずもがな、ましてや「打工人」と呼ばれることでさえ、受け入れ難いことだと思いますね。
中国でも、すでに「社畜」という言葉が浸透しています。
きっかけは、新垣結衣さん主演のドラマ「獣になれない私たち」から。
日本の文化が若者に与える影響は少なくありません。
しかし、今年はオリジナルの「打工人」が大流行。
「社畜」に代わる新たなキーワードとなりました。
近い将来、中国語の試験に登場する日が来るかもしれませんね。