悲しいデータが飛び込んできました。
中国国内の独立(個人)書店は今、窮地に立たされています。
中国実体書店連盟が全国1,021の独立書店に調査を行ったところ、
・90.7%が営業停止
・90%以上の書店で売上激減
・37.02%の書店の準備金は1ヶ月もたない
・45.02%の書店は余命3ヶ月
と、最悪の状況。
年初から苦しかった経営に、新型コロナウイルスが拍車を抱えた形となりました。
各書店の悲惨な現状
南京市で24時間営業をしていた「二楼南書房」を例に見てみましょう。
現在の経営状況は、
・従業員18人の給与は計10万元
・年末に改装工事で休業
・営業収入はなし
支出を賄うだけの収益が上げられない状態です。
オーナーの陳氏は「これほど衝撃を受けたことはない」と溜息をつきました。
チェーン展開する「単向空間」はどうでしょう。
2月24日時点で4店舗のうち営業を再開したのは、北京大悦城店の1店のみ。
しかし、ショッピングモール全体で閑古鳥が鳴いていて、来店者数は通常時のたった10%まで落ち込んでいます。
1日で売れるのは15冊で、そのうち半分は従業員が購入しているとのこと。
2月の売上は約80%ダウン、取り扱い商品の供給も停止しました。
実体書店が立ち行かなくなった理由
①価格競争の激化
オンラインショッピングモールが生活の中心となった今、リアル書店は販売価格では優位性を保てなくなりました。
通常、1冊の本の出版コストは35~40%。
さらに流通費や管理費が加わると、原価は63%にもなります。
ネットショップでは原価に数%を上乗せした値段(小売価格より低め)で出品されますが、実店舗の場合は人件費や固定費を加味しなければなりません。
たとえ15%引きでセールを行ったとしても、利益は残らないのです。
②紙媒体の読者が減少
「人民網」の調査によると、成人の50%以上がデジタル書籍に移行している傾向にあることが分かりました。
書店への客足が伸び悩む大きな理由の一つと言えるでしょう。
多くの書店にはカフェが併設されていて、お客を呼び込む様々な取り組みを行っているものの、「ラッキンコーヒー」のようなチェーン店に対抗できるビジネスモデルとまではいかないようです。
③イベント等の費用対効果が低い
「象甲書店」は1年間で約100回のイベントを実施し、そのうち90%は自費で行いました。
実際の結果は……直接的な売上に繋がっていません。
現在の「象甲書店」の主要な収入源はオンラインへと移行しています。
日本の書店は「書店にあらず」
東京の代官山にある「蔦屋書店」。
TSUTAYA創業の増田宗昭氏が「本を売るだけでない施設」をコンセプト掲げた本屋で、レコード・ビデオのレンタルからカフェ運営まで幅広く手掛けています。
強みは何といっても2003年に導入された「Tカード」でしょう。
2018年9月時点でTカードの加盟店は全国で約94万店で、ローソン、ガソリンスタント、宅配便などで大手企業が多数。
会員数は6,788万人と日本の総人口の半数以上が利用しています。
このプラットフォームが持つパワーは莫大で、「蔦屋書店」の収益の20%が書籍と音楽、残りの80%はTカードがもたらしています。
さらにもう一つ例を。
1983年設立された漫画、コミック、アニメなどを専門に扱う「Animate」(アニメイト)も個性的な書店の一つです。
2015年4月には島根県の松江市内にあるイーオンに店舗をオープンし、セブンイレブンやスターバックスよりも早く、全47都道府県への進出を達成しました。
日本のサブカルチャーが発展・グローバルに広がる中、アニメイトは書籍以外の分野からキャッシュフローを得ることに成功しています。
例えば、池袋本店では「黒子のバスケ」とのコラボによって、
・ノート
・ポスター
・音源CD
・アクセサリー
・抱き枕
・Tシャツ
・黒子餅
など周辺グッズが大人気となり、売上が飛躍的に伸びました。
現在、アニメイトはゲーム、アパレル、映画、レストランなどに事業を拡大しています。
時代の流れに対する出版業界の対応・変化を見ると、日本と中国ではに大きな差があるようです。
ただ単に書籍のみを販売するのではなく、顧客の内に秘めた訴求・欲求をくみ取り、付加価値を付けていくことこそが、リアル書店が生き残っていく道だと思います。
※本記事は下記サイトを元に構成・翻訳しています。
■参考サイト(中国語)
早在疫情之前,那些独立书店就撑不住了