中国の若者に人気の動画サイト「哔哩哔哩」(ビリビリ、bilibili)が4月9日、ソニーから4億ドルの戦略投資を受けることを発表しました。
これは双方が多領域への展開に向けタッグを組み、特にアニメやモバイルゲームの分野への強化を意味します。
ビリビリは2018年10月に「腾讯」(テンセント、Tencent)から3.2億ドルを調達しています。
また2019年2月には「阿里巴巴」(アリババ、Alibaba)がビリビリの株主となりました。
中国の二大IT企業に加え、日本の巨頭・ソニーも参画。
テンセント、アリババ、ソニーのビッグ“ダディー”がビリビリのバックに付くこととなりました。
ビリビリの基本情報は↓から。
利用者数とユーザー層
ビリビリのターゲットユーザーは1990年後、2000年後生まれの若年層。
コンテンツを「二次元」(サブカルチャー)に特化したことで、「90後」「00後」の心を掴むことに成功し、サイトを開設以来、彼らから圧倒的な支持を得ています。
3月18にビリビリが公表した業績レポートによると、2019年4Q(10月~12月)の月間アクティブユーザー数(サイト訪問者数)は1.3億人。
前年同期比で40%増加し、過去最高を記録しました。
月間ユーザー数
→1.3億人(前年比40%↑)
モバイル端末ユーザー数
→1億1,600万人(前年比46%↑)
1日のアクティブユーザー数
→3,800万人(前年比41%↑)
ビリビリは「弾幕」(画面の右から左に流れるコメント)機能やその独特な文化で「中国版ニコニコ動画」と呼ばれています。
サービス開始当初は「ニコ動」からの2次作品が多く、ユーザーは日本の漫画家やイラストレーターの影響を受けて育ちました。
その後、サイトが円熟すると、自国民のアイディアによるオリジナルのアニメや音楽が投稿されるようになります。
この過程でビリビリは大きな文化圏を築くことになったのです。
2019年11月17日には「bilibiliオリジナル作品発表会」にて40の新作アニメを公開。
今年に入ると、総勢100人を超える「アップ主」(動画作品の投稿者)と共に大規模なライブ配信イベントで、勢いを加速させています。
経営状態は芳しくない…
近年、ビリビリの売上は右肩上がりに伸びています。
2019年の総営業収益は67.8億元(1,040億円)に達しました。
しかしながら、利益は上がっておらず、最終的には13億元(200億円)の赤字決算。
経営状況およびキャッシュフローは決して良くありません。
ビリビリが急激に成長した裏には、巨額の損失とそれを補填する出資の受け入れが相まっている現状があります。
一般的な動画サイトの収入源は、
・コンテンツ販売
・価値の創造
です。
折しも、好調なモバイルゲーム事業によって、ビリビリの企業価値は高まりました。
ところが肝心の広告効果は他サイトに比べると低く、見劣りします。
有料会員数で比較しても、ライバルの「爱奇艺」(アイチーイー、iQIYI)、「腾讯视频」(テンセントビデオ、Tencent Video)、「优酷」(ヨーク、YOUKU)には遥かに及びません。
カルチャー性を重視するあまり、動画サイト運営のビジネス化に後れをとっている点は、大いに改善の余地がありそうです。
ソニーが出資する理由
そのような状況の中、なぜソニーはビリビリに出資することにしたのでしょうか。
そこにはお互いが「Win-Win」の形が見えているからだと予想します。
精錬された日本の文化に踏み入れたいビリビリにとって、ソニーのオファーはこの上ないはず。
投資に主体は「ソニーミュージックエンターテイメント」(SME)であり、無数の版権を所有しています。
これらの音源をビリビリ上で視聴できるとなれば、他者との差別化を図ることが可能でしょう。
・日本のカルチャーコンテンツを狙える
・SMEの音源使用権
ビリビリは、2016年よりソニー傘下の「Aniplex」(アニプレックス)のスマートフォンゲーム「Fate/Grand Order」の独占配信を行っています。
ゲーム分野で実力を証明したビリビリが、逆にソニーにとっても、魅力的なものに映ったに違いありません。
そんなソニーは虎視眈々と中国市場への参入を狙っていました。
しかし、主力商品の「Play Station」は中国のマーケットでは伸び悩んでいます。
ビリビリと提携してテコ入れをしたいことでしょう。
また音楽分野においても、規模は決して小さくありません。。
この点においても、ソニーミュージックは大きなチャンスを掴むことができるかもしれません。
ビリビリ上でミュージックビデオを配信することで、中国国内のファン拡大が期待できます。
・中国市場への参入と存在感
・音楽分野の開拓
総合的には、ビリビリの長期的な発展と潜在能力については楽観視していますが、まずは経営・収益の改善が不可欠でしょう。
そこに手を差し伸べた巨大企業のソニー。
果たして、幸運をもたらすことはできるのでしょうか?
今後とも目が離せません。
※本記事は下記サイトを元に構成・翻訳しています。
■参考サイト(中国語)
索尼入股B站后,各取所需能否”扭亏为盈”